スーパーインポーズテレビ電卓の製作

 このテレビ電卓は、拡大読書器(弱視の人が使うテレビ拡大鏡)と併用することを目的に作成しました。
 今まで、通常の電卓を使ってきましたが、拡大読書器と通常の電卓を併用するのは、伝票などと電卓の数字の両方を一度に拡大して見れないので不便でした。使いやすい電卓がないかと思っていました。
 音声電卓という方法もありますが、職場では気が引けますし、目で確認するほうが効率的です。
 電卓単体で使うなら、パソコンとか、テレビに表示できるグラフ関数電卓(VI-9850Ga PLUS)とか、入力が不便ですがテレビ出力機能のある携帯電話とか電子手帳などの電卓機能を使うという方法もありますが、画面をカメラ入力と電卓と上下に分割表示できるようなものは、今のところ見つかりません。
 実は、計算機能を付加できる拡大読書器(SmartView 5000KP他)もあるようですが、今のところ日本で入手可能かわからないですし、拡大読書器を買い換えるのは高くつきます。
 結局、今のところ市販の物で思うようなものが見つからず、作成することにしました。
 表示部分を別に作成する方法もありますが、設置がわずらわしくなりますし工作は苦手です。スーパーインポーズなら工作も少なくてすみそうです。作成当初は「マイクロテクニカ製OSD-232」というスーパーインポーズ専用ボードを使うことを考えていました。このボードは、PICマイコンが使われていて、PICマイコンを差し替えるだけで、色々なことができる可能性がありました。でも、オリジナルキャラクターが作れないことや、小数点を思うように表示できなさそうでしたので、スーパーインポーズの部分も自作することにしました。

拡大読書器の下で電卓を使う様子(平方根の部分が電卓表示)撮影:2007-10-19
外観写真
左下にある箱が作成した電卓です。

 制御には、マイクロチップテクノロジー製のPIC18F1320という内部40MHz動作のワンチップマイコンを使用しました。
 キーボードは、パソコン用のPS/2接続テンキー(サンワサプライ製NT-9PPK)を使用しました。
 PC-9801シリーズ用のテンキーの方が制御が簡単で互換性の心配もなく、ファンクションキーも付いているのですが、入手しにくいのと、手持ちのサードパーティー製98用テンキーの調子が良くなかったのでPS/2のテンキーを購入することにしました。
 PS/2接続のテンキーは、キーの数が少ないので、数字以外のキーは2つの機能を持たせ、短押しと長押しで区別しています。短押しと長押しの区別は、画面の左端に記号を表示することで判別できるようにしていますが、記号を右端に表示するか、音で区別できるようにした方が確認しやすいかも知れません。
 OFFキーで非表示になります。ONキーはありませんが、何かキーを押せば表示と共に押したキーが入力されます。
 NumLockキーとTABキーは同じ機能を割り当てています。(このテンキーのNumLockキーは小さくて普段使うことを想定していないようです。)

キートップの印字 短押し時 長押し時
NumLock
TAB BS
Ent
er
00
AC
AC C BS ÷
×
00
OFF
OFF MC MR
      M-
      M+
     
   

内部の様子(左に接続しているケーブルはマイクロテクニカ製PICライターEPIC-950のケーブル)
内部写真

回路図(tv_calc02.gif 19KB)(水魚堂さん作 回路図エディタBSch3V 使用 ペイントでGIF形式に変更)

実体配線図(tv_calc01.gif 60KB)(JR7DUTさん作 ユニバーサル基板原図 使用 ペイントで作成)

ソースリスト(main.txt 34KB)(マイクロチップテクノロジー社 MPLAB IDE Version 7.60 使用 元の拡張子はasm,主な部品リストがソースリストの最後にあります。)

便利なソフトや図面を公開下さっている皆さん、ありがとうございます。

問題点
 ハードが完成した段階では、同期信号もPICマイコンで生成する予定でした。そうすれば、縦線がギザギザになったり、ぶれたりしないはずです。しかし、どうも同期がとれずあきらめました。(私の視力では気にならなかったり・・・。)そのため、現状では74HC4052など不要な部品があります。
 PS/2接続のテンキーは、製品によって動作しないものがあるようです。4台のフルキーと1台のテンキーは動作しましたが、富士通製ノートパソコンのオプションテンキーは制御コードが違うようで動作しませんでした。
 キー入力信号にエラーがあった場合の処理をしていません。
 入力画像によっては、なぜか画像がゆがんだり、同期が取れにくかったりすることがあります。
 内部のコネクターの頭がつかえます。
 ソースリストが、スパゲッティーに・・・。
 他にも、問題があるかもしれません。ご指摘、ご指導いただけると幸いです。


作成後記
 たかが電卓ですが、いざ作ってみると結構大変でした。回路は詳しくないし、苦手な半田ごて、厚い解説書、英語のデータシート、根気のいるソフト開発など、もちろんルーペ、拡大読書器や画面拡大ソフトなども使わなければできませんし、よく作る気になったと思います。
 トラ技1997年5月掲載のブレイクアウトゲームの製作記事には大いに励まされました。
ゲーム写真

希望
 パソコン画面と分割表示できる拡大読書器を望みます。

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